講義の途中や最後に「質問はありますか?」と聞いても、答える人はあまりいません。
それは、質問がない程に受講生が理解しているのではなく、単純に質問が思いつかないという場合がほとんどです。これは、講義を理解していないことを意味します。
質問というと、「視点を変える」や「事例にあてはめる」など、いわゆる「いい質問」をイメージしますが、相手の話を理解していなければ質問はできません。
質問は、自分の理解を高める手法という一面がありますが、そのためには、まず話の理解を高める必要があります。
では、理解を高める勉強法とは何でしょうか?
わかりやすい講義、わかりやすいテキスト、問題に対するわかりやすい解説などが思い浮かびますが、それよりも単純な方法があります。
今回の論文は、理解を高めるための効果的な方法に興味がある人にぜひ読んで欲しいものです。
論文タイトル
Dyadic explanations during preparatory self-study enhance learning: A randomised controlled study
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33686715/
説明は理解を深めるか?
忙しい人のために結論を言うと、自分や他人に説明することで、知識の習得や理解の向上を促すことができるという研究結果を示しています。
以下、実験内容を少し知りたい方はお読みください。
実験は120人の将来有望と思われる医学生たちを、1回動画を見るグループと2回動画を見るグループ、自己説明グループと、相互説明グループの4つにランダムに振り分けました。
その後、実験手順が書かれた紙を読んだ後、
・1回動画再生グループは、動画を一度視聴した後、テスト
・2回動画再生グループは、動画をもう一度視聴した後、テスト
・自己説明グループは、動画視聴後に自分自身に説明(たぶん独り言)をしてテスト
・相互説明グループは、動画視聴後にお互いに説明しあった後、テスト
そして、全ての参加者は、1週間後に再度テストを受けました。
個人的にこの1週間の間に実験に参加した学生同士で話をすると実験の結果に影響を及ぼした可能性は否定できないと思います。
結果は自己説明グループと相互説明グループは、動画を見ただけの2つのグループよりも有意に成績が良く、相互説明グループは、他の3つの条件よりも優れた結果になりました。
自己説明、相互説明のアプローチは、アクティブラーニングというもので、能動的になり、理解を深め、知識の定着を促すことができます。
実験結果はアクティブラーニングのICAP理論(対話的・建設的な関わりは、能動的・受動的な関わりよりも優れた学習につながるという仮説)の説得力をさらに増すものでした。
※ICPA理論について知りたい方は下記論文を読んでください。本当に面白いです。
https://bmcmededuc.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12909-019-1901-7
勉強は仲間がいた方がよい
難しく考える必要はありません。
例えば、学生は単に講義を受けるだけよりも、自分に対して説明する方が良く、さらに、ペアで説明しあうことで、より効果的に学ぶことができるかもしれません。
これはビジネスマンにも同様に当てはまります。
チームで新しいプロジェクトに取り組む際、知らない分野を学ぶ必要があるでしょう。
その場合に、お互いにアイデアやタスクに関する理解を共有し、説明し合うことで、知識の習得や理解の向上を促し、効果的にプロジェクトを進めることができる可能性があります。
要するに、この論文は、学びの方法を効果的に変えるための一つのアイデアです。
しかし、小さな一歩ですが、学びや仕事の取り組み方を見直し、効果的な方法を実践することで、より良い結果を得ることが期待できます。
また、コミュニケーションをとるため、相互理解が深まり、周囲の人々との協力関係も向上させる効果があります。
まとめると、自分や他人に説明することを積極的に取り入れることで、理解度の向上や知識の定着、さらにはチームワークやコミュニケーション能力の向上にも繋がるということです。
仲間がいる人は勉強が捗るという結果は独学ばかりやっている自分には悔しい結果となりました。
ただ、私のことで恐縮ですが、昔は個人プレーに走りがちだったのですが、最近はチームっていいなぁと本当に思います。なかまだいじに。
「情けは人のためならず」とは,人に対して情けを掛けておけば,巡り巡って自分に良い報いが返ってくるという意味ですが、この実験は他人に説明すれば自分の理解が進むので、巡るどころか即、効果があるので、「説明は人のためにならず」と言えるなと思ったところで今回はおしまいです。