今月のAiジャーナルクラブは「A Causal Role for Gastric Rhythm in Human Disgust Avoidance(ヒトの嫌悪感回避における胃のリズムの因果関係)」をクリティークしました。
何か、見るだけで目を逸らすような不快感を感じるものってありますか?
例えば、戦争の画像、災害の画像、グロテスクな画像はそうですね。あと、汚いものとか、台所にあらわれる通称Gとか。
人や物を見るだけで嫌になり目を逸らすという嫌悪感
それは人によりある程度異なりますが、見るだけ嫌になるため目を逸らすことが生理的な反応というものでしょう。
そこで、ボタンやスカーフのようになんでもない画像を見た時と、嫌悪感を感じる画像(この実験では排泄物)を見た時の目の動きを比較すると嫌悪感のレベルが測定できると考えたようです。
どうしたら嫌悪感を軽減できるのか?
研究者は「嫌悪感を抱いたら胃の調子が悪くなるから、胃薬飲んだら嫌悪感なくなるはず(意訳」と考えたのだと思います。一般的な胃薬「ドンペリドン」を飲む前と飲んだ後で目の動きに変化があるのかを実験しました。
この論文の面白がりポイントは実験の設定にあると思います。
「胃薬飲んだら嫌悪感軽減するんじゃないか?」
心配事が多かったら胃が痛くなることがあるので、メンタルが体調に影響を与えるのは経験的にわかるのですが、胃が大丈夫ならメンタルにも軽減効果があるんじゃない?と逆に考えるのが面白い。
卵が先か鶏が先かではないですが、逆にして考えるという発想はなかなか思いつかないと思います。やはり体調が良いとメンタルもよくなりますからね。
これが可能なら嫌な人に会う前には胃薬、嫌なことをやる前にも胃薬となるかも。
最近は有名人が昆虫をたべてみたというニュースを見たことがあるし、そこらへんを狙ってそうな気がしました。
論文は実験風景を想像すると面白い
88回も嫌悪画像見るんですよ!そして時給1500円程度ですよ。
見るたびにインセンティブが発生するターンもあるのですが、数十円単位。1万円にもなりません。
そして、6時間絶食でカフェインやニコチン禁止。軽く200mlの水を飲んだだけです。
健康診断ですかね?壮絶です。
そして嫌悪画像はどうやって準備したんでしょうか。ネットで検索して使ったのでしょうか。それとも独自で・・・。
どちらにしろ実験準備の段階で胃薬が必要な気がします。
さて、結果はどうかというとざっくり言うと効果あり。
ただし、本人の自己申告では嫌悪感は減っていません。あくまで目の動きに軽減効果があったというのが正しい言い方でしょうか。しかし、生理的な反応に効果があるというのは大きな発見です。
この実験は今後どうしたいのかイマイチわかりません。普通は今後の展開を書いているのですが、実験に至った経緯も今後の展開もない、ちょっとその点わかりにくい論文でした。
私はAiジャーナルクラブをこのような楽しみ方をしています。何かに役立ててやろうという野心は読み始めにはありません(私だけの話です
自分も大学院で研究していたことがあるのですが、いい年した大人がバカみたいなことを真剣にやるのが面白くて仕方がありません。
一つの論文が学術誌に掲載されるまでにはとんでもない苦労と努力が隠れている。それを想像すると単純に面白く、読み進めるとためになる知識があったりなかったりします。
読むなら英語の論文がいいです。
今は翻訳アプリの能力が高いのでほぼ気にせずに読めます。Aiジャーナルクラブは設立して間もない頃から「DeepL」を推奨しています。よかったら検索してみてください。
abstract(概要)が論文にはあるのでそれだけ翻訳して読んでも面白いですよ。ああ、そこらへんはまた別の記事にしましょう。
それでは、次回は4月2日の予定。アクティブラーニングに関する論文の予定です。
今回の論文リンク
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33238154/
Aiジャーナルクラブってこんなことしています
Aiジャーナルクラブは基本的に担当者に任せられます。
担当者はこの論文を選んだストーリーを話し、内容に入っていくのですが、今回は掲載誌のインパクトファクター(信頼度みたいなもの)を調べ、研究者の専門まで調べてくれたようで、大変イメージがわきやすかったですね。
正直なところ、実験データ、計算式の導き方また、統計の見方はまだまだ難しいので、Aiジャーナルクラブの主催者でもある有永さんにレクチャーをうけることが多いです。
この点なんとか自分でも見れるようにと思い、統計学の本も読んだのですが、どうにも難しい。
こんな私でも偉そうに進行役やってますので興味のある方はご連絡ください。
info@tsunaguba.com